MTAセメント(歯髄保存療法)

MTAセメントによる治療

虫歯が深くなり神経に達している場合、歯の神経を取る「抜髄(ばつずい)」という治療が必要になります。しかし、歯の神経を取った歯は、大きく削るため歯の強度が弱くなったり、虫歯の再発に気がつきにくいため虫歯が根管内で再発してしまい最終的に抜歯が必要になったりなど、歯の寿命が短くなる可能性が高くなります。

歯を失う2大原因は虫歯と歯周病ですが、3番目に多い原因は「破折(歯が欠けた・割れた)」で約18%を占めています。(参考:「歯の喪失の原因」2020年 厚生労働省e-ヘルスネット
歯が破折する原因は、外傷や歯ぎしりや食いしばり、噛み合わせなどですが、神経を取る処置を行ったことのある歯(失活歯)は神経が残っている歯よりもろくなっているため、破折しやすいと言えます。つまり、歯の寿命を長くするには、なるべく神経を取り除かないことが重要です。

虫歯が歯髄にまで達した歯の断面図

MTAセメントを使用した治療とは、歯の神経の近くにまで進んだ深い虫歯でも、虫歯になった部分を削って露出してしまった神経や血管をMTAセメントで覆うことによって歯の神経を残すことができる治療(歯髄保存療法)なのです。

人生100年時代といわれるこれからの時代、なるべく多くの歯を長く残すために、当院では少しでも歯の寿命を延ばす治療としてMTAセメントによる治療を行っています。

MTAセメントとは

MTAセメント(Mineral Trioxide Aggregate)とは歯科用の水硬性セメントのことです。ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシムなどのケイ酸塩や酸化ビスマス、石膏などが主な成分です。セメントの成分が水分と反応する際に水酸化カルシウムが生成され強アルカリ性になります。このため強い殺菌力をもち、持続的に歯髄や根管内を殺菌してくれます。さらに、口腔内のように水分の多い状態でも硬化し膨張するという性質を持っているため、密封性が高く細菌感染のリスクが下がります。

MTAセメントのメリット

  1. 強い殺菌作用がある
  2. 身体に優しい素材で、人体への親和性が高いためほとんど痛みが出ない
  3. 封鎖性が高く、抗菌作用が維持されやすい
  4. 強度が高い
  5. 歯の神経を取る治療と比べて治療回数が短くてすむ

MTAセメントのデメリット

  1. 適応症が限られている
  2. 保険適用外(自由診療)になるケースが多い
  3. 根管内に充填した場合、除去が困難である
  4. 治療後に歯の状態によっては抜髄になってしまう場合がある

根管治療にも用いられるMTAセメント

虫歯が深く歯の神経が残せなかった場合、感染した神経を取り除く治療(根管治療)を行います。神経を取り除いた後、空洞になった根管内をきれいに洗浄し薬を詰めることを「根管充填」と言います。根管充填は再感染を防ぐ重要な治療になります。

この根管充填に使われる薬の1つが、殺菌作用の効果が高いMTAセメントです。MTAセメントを使用するメリットは、上記で述べたメリットと同様に①高い殺菌作用②生体親和性③高い封鎖性④高い強度があげられます。根管治療で最も重要なのは、根管内の再感染の防止です。封鎖性が高く、持続的な殺菌効果を期待できるMTAセメントを用いた根管充填で、抜歯を回避し成功率を高めることができます。エンドセム(根管充填剤)

MTAセメントを使用した根管治療は根管内に充填すると除去が困難なため、再度根管治療をするのが難しくなるという欠点はありますが、それ以上のメリットがあります。

当院では、可能な限りご自身の大切な歯を残すことを考慮した治療を行っています。お気軽にご相談ください。

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