知覚過敏

冷たいものや熱いものを口にしたとき、キーンと歯がしみるような痛みを感じたことはありませんか?
虫歯のような大きな穴が歯に開いていないのに、冷痛(冷たいもので痛い)・擦過痛(歯ブラシで痛い)があり、痛みがその時だけですぐ治まりあとを引かなければ「知覚過敏」かもしれません。

歯がしみる人

知覚過敏(象牙質知覚過敏症)~なぜ歯がしみるの?~

知覚過敏は、正式には「象牙質知覚過敏症」といいます。

歯の表面は「エナメル質」という硬い組織で覆われていますが、その内側には「象牙質」と呼ばれる組織があります。さらにその内側には「歯髄(しずい/神経)」が存在します。

歯の断面図

象牙質には無数の「象牙細管(ぞうげさいかん)」と呼ばれる細い管があり、その中に神経に通じる液体が流れています。この象牙質が何らかの原因で外に露出すると、冷たい刺激などが神経まで伝わり、「しみる」「痛い」と感じるのです。

 

象牙質表面に象牙細管が開口している図

 

▼動水力学説

現在、象牙質知覚過敏症のメカニズムとして最も有力な学説は、象牙細管内液の移動に注目した『動水力学説』です。

これは、様々な要因でエナメル質やセメント質が削除され、象牙質が口腔内に露出し、その表面に象牙細管が開口したところに物理的刺激や科学的刺激(例えば、冷たい飲食物や風、歯ブラシの刺激など)が加わると、象牙細管内の液体が動くことで、その刺激が神経に伝わり、痛みとして感じるという考え方です。

つまり、象牙細管が外に露出し、液体の動きが直接神経に影響するようになると、「キーン」としみる症状が出やすくなるのです。

知覚過敏の原因

象牙質が外に露出し、刺激が神経に伝わりやすくなることで知覚過敏は起こります。その原因は1つではなく、複数の要因が重なっていることも少なくありません。

以下に、主な原因をご紹介します。

  • 歯みがきの力が強すぎる(磨耗・楔状欠損)

    硬い歯ブラシや強い力でのブラッシングにより、エナメル質がすり減ったり、歯ぐきが後退して象牙質が露出することがあります。

  • 歯ぎしり・食いしばり(咬耗・アブフラクション・マイクロクラック)

    就寝中の歯ぎしりや無意識の食いしばりによって歯への過剰な負担がかかり、歯の表面に細かな亀裂が入ったりエナメル質が摩耗したりするため、象牙質が露出しやすくなります。

  • 歯周病による歯肉の退縮(歯根露出)

    歯周病が進行すると、歯ぐきが下がり、本来歯ぐきに覆われていた歯の根元(セメント質)が露出。セメント質はとても薄いため、すぐに象牙質がむき出しになってしまいます。

  • 酸蝕歯

    炭酸飲料やフルーツ、ワイン、酢の物など、酸性のものを頻繁に摂取するとエナメル質が溶けやすくなり、象牙質がむき出しになるリスクが高まります。(詳しくはこちらのページ「酸蝕歯」もご覧下さい)

  • 加齢による変化

    年齢とともに歯ぐきが自然に下がることがあります。また、長年の歯磨きや噛む動作によって、エナメル質やセメント質が徐々にすり減り、象牙質が出やすくなります。

  • 偏った噛み合わせ

  • 特定の歯ばかりで噛むクセがあると、その部分の歯に負担が集中し、摩耗や亀裂が起きやすくなります。力のかかりすぎた歯は象牙質が露出しやすくなり、知覚過敏のリスクが高まります。

  • 初期虫歯(白斑)

    歯垢が長期間残っていると、エナメル質が白く濁ったように変化(=脱灰)し、**初期虫歯(白斑)**ができます。この段階ではまだ穴は開いていなくても、エナメル質が弱って刺激が伝わりやすくなっており、知覚過敏のような症状が出ることがあります。

「歯頸部」は知覚過敏が起こりやすい場所です

歯と歯ぐきの境目(歯頸部:しけいぶ)は、特に知覚過敏が起こりやすい部位です。通常、この部分は歯ぐきによって保護されていますが、

  • 加齢や歯周病などで歯ぐきが下がる歯肉退縮
  • 歯磨きの圧が強すぎて歯ぐきがすり減る

といった理由で歯根部の「セメント質」が露出します。セメント質は非常に薄く、こすれたり酸で溶けたりしやすいため、すぐにその下の象牙質がむき出しになってしまいます。

その結果、象牙細管を通じて神経が刺激されやすくなり、知覚過敏の症状が現れるのです。

知覚過敏の治療法

▼ セルフケアでできること

  • 知覚過敏用の歯みがき剤を使用する

    → 象牙細管をふさぐ成分が含まれており、刺激を感じにくくします。

  • やさしいブラッシングを心がける

    → 柔らかめの歯ブラシで、力を入れすぎず丁寧に磨きましょう。

  • 酸性の飲食物を控える

    → 摂取後は水で口をゆすぐと効果的です。

▼ 歯科医院での処置

  • 知覚過敏用のコーティング剤の塗布

    → 象牙質の表面にバリアをつくる処置です。数回の処置で症状が緩和することもあります。

  • 歯ぐきの再生治療(重度の場合)

    → 歯周病などによって歯ぐきが下がってしまった場合は、歯ぐきの再生を目指す治療が行われることもあります。

  • マウスピースの使用(歯ぎしり対策)

    → 就寝中の歯ぎしり・食いしばりが原因の場合、専用のマウスピースを装着することで歯への負担を軽減できます。詳しくはこちらのページ「歯ぎしり対策のマウスピース(ナイトガード)」もご覧ください。

 

症例1:【治療前】歯肉退縮

【治療後】歯周外科治療(歯ぐきの再生療法)

症例2:【治療前】楔状欠損

【治療後】レジン修復

知覚過敏は、軽度であればセルフケアで改善することもありますが、痛みが強かったり長く続くようであれば、他の病気(むし歯や歯の亀裂など)が原因の場合もあります。自己判断せず、ぜひ一度歯科医にご相談ください。

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